総合講座III(経済学) 2006年度 ゲーム理論入門(オークション編)
ゲーム理論とは
ゲーム的状況
- 複数の人が存在する(別に人間でなくともかまわない)
- 人と人との間の相互依存がある(自分がしたことが相手に影響を及ぼすし、逆もあり)
ゲーム的状況の例
- 将棋は「先手」と「後手」の2人がいて、コマを動かしていくと勝ち負けが決まる。
- 1個のケーキを2人で分ける状況。相手が多く食べたら自分の食べる分は減ってしまう。
- 選挙。各候補者の公約によって投票が変化するから、それによって当落が変化する。
ゲーム的状況をモデル化(状況の特徴を捉えて単純化すること)したものが「ゲーム」
ゲームにおいて人々がどう振る舞うか、またその結果何が起こるのかを考えるのがゲーム理論
ゲーム理論の歴史
- 1944 フォン・ノイマンとモルゲンシュテルン 「ゲームの理論と経済行動」(Theory of Games and Economic Behavior)
- 1994 ナッシュ・ハーサニ・ゼルテンがノーベル経済学賞受賞
- 2001 映画「ビューティフル・マインド」 ナッシュの生涯を画いたもの。本を読んだ方がいいかな?
- 2005 オーマン・シェリングがノーベル経済学賞受賞
ゲーム理論の基本的用語
- プレイヤー:ゲームに登場する人(企業・動物などの場合もある)
- 戦略:プレイヤーがゲームで取ることのできる選択肢(行動の計画)
- 利得:プレイヤーの目的を数値化したもの。各プレイヤーはできるだけ自分の利得が大きくなるような戦略を選択する。
- 均衡:ゲームでプレイヤーが(理論上)こうするに違いないと思われる戦略の組合せ。
オークションとは
美術品、農水産物、貴金属、中古車などの取引方法の一つ。
オークションに触れる
周波数のオークション
TV放送や携帯電話での情報送信には電波が利用される。
混信を防止するためにそれぞれの通信で使える周波数帯域が決まっている。
今までの決め方:役所が割当。抽選等による。←社会的に本当に必要なところに配分されるか疑問。
オークションによる割当だと最も高い値段を付けた(=周波数の利用により最も利潤が高い)事業者が利用できる。→効率的利用
アメリカやヨーロッパで携帯電話の周波数割当がオークションで行われた。
オークションの種類
- 競売:買い手が価格を言いあう、あるいは競り人(オークショニアー)が値段を次々と言っていく方式。オークション中に買い手全員に値段がわかる。
- イングリッシュ・オークション:低い値段から出発して、段々値段が上がっていく。最後まで残った人が購入できる。
- ダッチ・オークション:高い値段から出発して、値段が下がっていく。最初に手を挙げた人が購入できる。オランダのチューリップの売買がこの方式。
- 封印入札:買い手全員が値段を書いた紙を封筒に入れるなどして応札。最も高い値段を付けた人が購入。オークション終了まで誰がいくらで購入するつもりなのかわからない。
- ファースト・プライス・オークション:最も高い値段を付けた人が自分の付けた値段で購入する。
- セカンド・プライス・オークション:最も高い値段を付けた人が「2番目に高い値段」で購入する。ヴィッカリー(Vickery)という人が1961年に提案した方式なので、ヴィッカリー・オークションとも言われる。
理論的に考えてみる
買い手の目的
購入できる場合、(本人の評価値−支払額)を最大化。
収入等価定理
売り手の得られる収入は上で挙げたオークションの形式にかかわらず等しい。
なぜか?以下の場合で考えてみる。
- 個々の評価値は全て異なる
- 個々の評価値は全て共有知識
- 人々に番号をあらかじめ振っておき、金額が同じなら番号の最も小さい者が購入できる(タイ・ブレーキング・ルール)
- 番号の振り方は評価値の高い順。
証明の概略(講義で説明)
- ダッチ・オークションとファースト・プライス・オークションはできることとその結果が全く同じ。
- イングリッシュ・オークションとセカンド・プライス・オークションではどちらも結果が同じ(自分の評価値を提示する)。
- 上の前提からファースト・プライス・オークションの均衡では「最も高い評価値を持つプレイヤーが2番目に高い評価値で入札」する。
- セカンド・プライス・オークションでは一番評価値の高い者が番目の評価値で購入することになるので、ファースト・プライスとセカンド・プライスで支払う額(=売り手の受け取る金額)は同じ。
「truth telling」について
談合について
買い手間の長期的関係が存在することによる。
参考文献
- 中山幹夫『社会的ゲームの理論入門』 勁草書房
- 渡辺隆裕『図解雑学 ゲーム理論』 ナツメ社
- ロス・M・ミラー『実験経済学入門』 日経BP社