ゼミ生向け/産業組織の経済学/第3章
の編集
http://asuzuki.r.ribbon.to/pukiwiki/index.php?%A5%BC%A5%DF%C0%B8%B8%FE%A4%B1%2F%BB%BA%B6%C8%C1%C8%BF%A5%A4%CE%B7%D0%BA%D1%B3%D8%2F%C2%E83%BE%CF
[
トップ
] [
編集
|
差分
|
バックアップ
|
添付
|
リロード
] [
新規
|
一覧
|
単語検索
|
最終更新
|
ヘルプ
]
-- 雛形とするページ --
??ª®??¢±???¤??ªÂ/iHP-120
BlackBerry
BonTsDemux
BracketName
Express5800/S70SD
Fedora Core 4 インストールメモ
FormatRule
FormattingRules
FrontPage
HandBrake
Help
InterWiki
InterWikiName
InterWikiSandBox
InterWikiテクニカル
JkDefrag
MenuBar
MultiWriter
My Work
OpenOffice
PC
PC/SC420
PHP
PageDefrag
PageNavigator
PostScript
Profile
PukiWiki
PukiWiki/1.4
PukiWiki/1.4/Manual
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin/A-D
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin/E-G
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin/H-K
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin/L-N
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin/O-R
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin/S-U
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin/V-Z
QtPalmtop
RecentDeleted
RightBar
SandBox
SiteNavigator
StarSuite
Stata
Stata/パネル
Tips
VirtualBox
WikiEngines
WikiName
WikiWikiWeb
WinでLinux
YukiWiki
ask for discounts
「反」スタートアップセミナー
『演習ゲーム理論』を勝手に訂正
オンラインで読めるテキスト
ゲーム理論入門
ゲーム理論入門/そもそも、ゲーム理論って何よ?
ゲーム理論入門/ゲーム理論を学びたい人へ
ゲーム理論入門/シャープレイ値
ゲーム理論入門/繰り返しゲーム
ゲーム理論入門/仁
ゲーム理論入門/戦略形ゲーム
ゲーム理論入門/特性関数形ゲーム
ゲーム理論入門/不完備情報
ゼミ生向け
ゼミ生向け/Rによるやさしい統計学
ゼミ生向け/「社会の決まり」はどのように決まるか
ゼミ生向け/産業組織の経済学
ゼミ生向け/産業組織の経済学/第10章
ゼミ生向け/産業組織の経済学/第12章
ゼミ生向け/産業組織の経済学/第1章
ゼミ生向け/産業組織の経済学/第2章
ゼミ生向け/産業組織の経済学/第3章
ゼミ生向け/産業組織の経済学/第4章
ゼミ生向け/産業組織の経済学/第5章
ゼミ生向け/産業組織の経済学/第6章
ゼミ生向け/産業組織の経済学/第7章
ゼミ生向け/産業組織の経済学/第8章
ゼミ生向け/産業組織論
ゼミ生向け/産業組織論/第1章
ゼミ生向け/産業組織論/第2章
ゼミ生向け/産業組織論/第3章
ゼミ生向け/産業組織論/第4章
ゼミ生向け/産業組織論/第5章
ゼミ生向け/産業組織論/第6章
ゼミ生向け/産業組織論/第8章
ゼミ生向け/社会心理学
ゼミ生向け/組織の経済学
ゼミ生向け/法と経済学―企業関連法のミクロ経済学的考察
デジモノ
デジモノ/BlackBerry 8707h
デジモノ/Bluetoothマウス比較
デジモノ/CG-HDLA
デジモノ/DMC-LZ2
デジモノ/DVM-RXH16FB
デジモノ/HT-01A
デジモノ/KSC75
デジモノ/Kindle3
デジモノ/Kuro-Box
デジモノ/LIFEBOOK U
デジモノ/M3
デジモノ/M42 SQUARE
デジモノ/MP860
デジモノ/P3600
デジモノ/PD-205
デジモノ/PR-L5750C
デジモノ/PT2
デジモノ/PX-760A
デジモノ/PX-W3U3
デジモノ/PocketPostPet
デジモノ/QFC-F20
デジモノ/RD-X5
デジモノ/SC420
デジモノ/SL-C3200
デジモノ/VX747?
デジモノ/X51v
デジモノ/gigabeat V30T
デジモノ/iHP-120
デジモノ/wizpy
デジモノ/使ったイヤホン
ノー○○ジア大学特設ページ
プロフィール
ヘルプ
リンク
外書講読
外書講読/1章
外書講読/1章/語句説明
外書講読/8章
外書講読/8章/語句説明
簡単な書き方
気になった話
気になった話/2006年版
気になった話/2007年版
気になった話/2008年版
気になった話/2009年版
気になった話/2010年版
気になった話/2011年版
気になった話/2012年版
気になった話/2013年版
気になった話/2014年版
気になった話/2015年版
気になった話/2016年版
気になった話/2017年版
気になった話/2019年版
気になった話/2021年版
経済学入門
経済学入門/外部性
経済学入門/経済学とは
経済学入門/経済学の基本中の基本
経済学入門/公共財
経済学入門/参考資料
経済学入門/私が選ん「でない」お勧め本リスト
経済学入門/時事ネタ
経済学入門/時事ネタ/伊藤110424
経済学入門/時事ネタ/水谷110831
経済学入門/時事ネタ/藤井091011
経済学入門/時事ネタ/藤井091019
経済学入門/時事ネタ/日銀100615
経済学入門/時事ネタ/冨山141007
経済学入門/時事ネタ/北野111227
経済学入門/時事ネタ/野口091114
経済学入門/時事ネタ/野菜廃棄050824
経済学入門/時事ネタ/國枝110524
経済学入門/需要と供給
経済学入門/需要と供給その2
経済学入門/消費者行動と需要曲線
経済学入門/消費者余剰
経済学入門/生産者行動と供給曲線
経済学入門/生産者余剰と社会的余剰
経済学入門/費用と便益
研究業績一覧
見た本
見た本/アニマルスピリット
見た本/クルーグマンの視座
見た本/ソウルフルな経済学
見た本/テロの経済学
見た本/バカヤロー経済学
見た本/景気と経済政策
見た本/都心回帰の経済学
見た本/読んでいない本について堂々と語る方法
見た本/偏差値40から良い会社に入る方法
見た本/予想どおりに不合理
工学部(B)向け
災害研究まとめ
災害用リンク
参考資料
参考資料/その他
参考資料/ゲーム理論
参考資料/マクロ経済学
参考資料/経済学入門
参考資料/行動経済学
参考資料/産業組織論
産業組織論
産業組織論【学院】
産業連関分析について
質問用ページ
出張講義(経済学)
情報処理
食べ物
整形ルール
専門基礎演習
総合講座III
地方財政
地方財政モデル
注意事項
注目のブツ
豆知識
復興増税賛同者リスト保存版
便利ソフト紹介
便利ソフト紹介/2007 Microsoft Office プログラム用 Microsoft PDF/XPS 保存アドイン
便利ソフト紹介/AVG
便利ソフト紹介/Alcohol 52%
便利ソフト紹介/CDex
便利ソフト紹介/Chromium系ブラウザ
便利ソフト紹介/DVD2WMV
便利ソフト紹介/Daemon Tools
便利ソフト紹介/EBWin
便利ソフト紹介/EPWING辞書
便利ソフト紹介/Exact Audio Copy
便利ソフト紹介/GAUSS Light
便利ソフト紹介/HandBrake
便利ソフト紹介/JCount
便利ソフト紹介/JkDefrag
便利ソフト紹介/KompoZer
便利ソフト紹介/Libre Office
便利ソフト紹介/MPC
便利ソフト紹介/Maxima
便利ソフト紹介/Microsoft Office 互換機能パック
便利ソフト紹介/MuPAD
便利ソフト紹介/NHC
便利ソフト紹介/NextTrain
便利ソフト紹介/Office 2007 オールドスタイル メニューアドイン
便利ソフト紹介/Office2007用の2003風メニュー
便利ソフト紹介/OpenOffice.org
便利ソフト紹介/Opera
便利ソフト紹介/POPFile
便利ソフト紹介/PageDefrag
便利ソフト紹介/PrimoPDF
便利ソフト紹介/R
便利ソフト紹介/Skype
便利ソフト紹介/Softi FreeOCR
便利ソフト紹介/Spam Mail Killer
便利ソフト紹介/StarSuite
便利ソフト紹介/Sygate Personal Firewall
便利ソフト紹介/TeX
便利ソフト紹介/TeX/EPS
便利ソフト紹介/TeX/GSView
便利ソフト紹介/TeX/Ghostscript
便利ソフト紹介/TeX/TeXで表
便利ソフト紹介/TeX/dviout
便利ソフト紹介/UMSSort
便利ソフト紹介/VLC media player
便利ソフト紹介/VMWare
便利ソフト紹介/VirtualBox
便利ソフト紹介/Weka
便利ソフト紹介/Word 2007 アドイン Microsoft Math
便利ソフト紹介/gnuplot
便利ソフト紹介/unDonut+mod
便利ソフト紹介/サクラエディタ
*第3章 独占企業の行動とその経済的帰結 [#q082b1fe] **1. [#n07708de] ***1. 独占の生じる環境 [#tf091bfa] ある企業が独占かどうか判断するには市場の画定が必要である。同じ市場に属する製品のグループの場合、製品Aの価格が上がったとき製品Bへの需要が大きく増えるならAとBは代替性(同一の目的に使用されることが多いため、ある財の価格が上がる(下がる)ことにより、他の財の需要が増える(減る)ような財のこと。例えば、紅茶とコーヒーは代替財の関係にある。両者は、お菓子や、あるいは一服するときに一緒に飲まれることが多いからである。)Aの価格がa%上昇したとき、Bの需要b%変化するならば、その比率(=b/a)を製品BのAに対する需要の交差価格弾力性という。 また、市場の画定においては地理的範囲も必要である。地域Aの製品の価格上昇によって消費者が用意に地域Bの同じ製品に代替できれば、二つの地域は同じ市場にあるということである。 独占が生じるのは市場への参入に対して、規模の経済やサンク・コストなどの供給面の要因、市場規模の大きさ、規制などの参入障壁がある。 規模の経済とは生産規模が大きいほど平均費用を逓減できる。だが、2社目が参入することで、生産規模は減少し、平均費用が増加してしまう。さらに、供給量が増加するため価格が低下する。規模の経済が強いほど、新規参入による平均費用は上昇し、需要規模が小さいほど、新規参入によって価格は低下する。 また、既存企業はサンク・コストとなる投資を高水準にしているため、他の企業が競争するには大きな投資コストが必要となるため、新規参入は困難になる。サンク・コストは第一章で述べたように参入、退出障壁となる。 産業の市場規模は製品輸送コストや製品退出に対する貿易障壁に依存する。輸送コストや貿易障壁が高い産業ではその市場は一国や特定の地域に限定されてしまう。低所得の途上国では多くの産業で市場集中度が高く、経済成長につれてこれはは低下している。図3.1は各国の石油精製業の市場集中度と一人当たりの所得との相関図をあらわしている。最大の企業の市場シェアが低くなるにつれて一人あたりの所得が低下しているのがわかる。 第3の要因として法律の規制がある。まず自然独占(通信、電気、ガス、水道などの公共事業)がある。自然独占とは制度などの人為的な要因ではなく経済的な要因によって自然に発生する独占を指す。生産が規模の経済を持つとき、長期平均費用曲線が右下がりになる。この時、1つの企業が需要を独占した場合と、参入を認めて複数の企業で需要を共有した場合では、前者の方が、総費用が小さく効率的な生産となる。後者の場合、需要の分割によって参入企業すべてが赤字になることも考えられる。この場合には新規参入は発生せず、結果として自然に独占が発生してしまう。 また、特許が新規参入として機能する場合もある。特許(とっきょ)とは、新規で有用な技術を公開した発明者または特許出願人に対し、その公開の代償として、一定期間その発明を独占的に使用できる権利を付与する制度のこと。その権利を特許権という。たとえばゼロックス社のコピー機やポラロイド社のインスタント・カメラなどは特許が参入障壁であった。 **2. 独占企業の行動 [#s9e02fd9] ***2.1過小生産 [#g7b53ad4] 独占企業にとっての需要曲線は市場全体の需要曲線(P(Q))に等しい。需要曲線は通常右下がりと仮定すると、独占企業が供給を増やすと価格は低下する。独占企業の総費用曲線をC(Q)とすると、独占企業の利潤Π(Q)は以下の式であらわされる。 ここでP(Q)Qは総収入である。利潤を最大にするQha次の条件を満たす。 (1) 上の式の左辺は独占企業が1単位生産を増やすことによって得られる追加的な収入、すなわち限界収入MR(Q)であり、右辺はこれに伴う限界費用MC(Q)である。(1)の左辺が限界収入であることは図3.2が説明している。限界収入は1単位生産を増やすと販売数量が増えて価格が増えるが、他方で価格が低下し、販売による収入が低下することの両者の合計である。すなわち利潤最大化のためにはMR=MCとなるように生産量を選ぶが、独占企業の場合P'(Q)<0のため、限界収入は価格より小さくなる。また、独占利潤は限界費用が一定なら、(独占価格―限界費用)×独占数量―固定費用となるので、図3.2の からFを差し引いたものに等しい。 ***2.2マークアップ価格 [#n83987d5] 独占企業が生産コストと比べてどれだけ高い価格を設定するかは、需要関数の価格弾力性と反比例する。(1)式より、 (2) зは財の需要の価格弾力性である。(2)式から (3) となる。(3)式の左辺をラーナー指数といい、価格と限界費用の 離率を表す。(3)式からラーナー指数は財の需要の価格弾力性に反比例する。зの値が無限大に向かって増えるに伴い、ラーナー指数は1から0に向かって低下していく。 **3. 独占の非効率性 [#bd764721] 完全競争の場合と比べて、独占市場では以下の経済厚生(人々の受け取る経済的な満足・福利)が生じる。 ***3.1過小生産による資源配分上の損失 [#j6af2ef1] 完全市場と比較して、独占市場では生産者が独占利潤を得る反面、消費者は高い価格を払うこのになり、焼死者余剰が減少する。図3.2において消費者が失った余剰(台形 )のうち、独占の超過利潤 は消費者から企業への所得移転である。この移転は経済全体としては相殺される。残りの三角形AMEは消費者が失った分で企業の手に渡らなかったけ厚生損失である。完全競争市場に比べて独占市場では厚生損失が生じる理由は、独占が価格を高く維持するためである。 ***3.2 X非効率性 [#d5574950] 利潤を最大化するためには、完全競争市場化にある企業も独占企業であっても最小の費用で生産すべきだが、独占企業のほうが費用を最小化するのは難しい。この減少をライベンシュタイン(Leibensteiu)はX非効率性とよんだ。X非効率とは所与の資源を効率的に利用していない状況を資源配分の効率性問題と区別するための枠組みである。これを深刻化させる原因として第一に、組織あるいは構成員の地位が独占的であること、第2に、組織あるいは行動の権限階数が多いこと、第3に、組織構成員の作業成果に対する数量的把握が困難であることがあげられる。 4. 3 レント・シーキングとレント・ディシペーション レント・シーキングとは、1.企業による(独占)レント獲得・維持のための活動をいう。2.他企業の参入を阻止する行動や,政府による参入規制または輸入制限政策を実施・温存させるための政治的活動等が典型的。 またこれらの多くは社会的な資源の浪費となる。そのために資源を使うことをレント・ディシペーションという。 前回の補足説明 ・ 価格弾力性 価格の変化率=価格の変化量/元の価格の水準 (例) 価格が100円から110円に上がれば、価格の変化量は110円から100円をひいた10円になるが、価格の変化率はその10円を元の価格の水準である100円で割った0.1となる。変化率の場合には、通常これに100をかけてパーセントで表示するため、10%の価格上昇ということになる。つまり、 価格の変化率=価格の変化量/元の価格 =新しい価格―元の価格/元の価格 =110−100/100=0.1=10% となる。同様に 需要の変化率=需要の変化量/元の需要量 となる。 このように変化の大きさを変化率で表せば、どのような単位で価格や需要量が表示されていても、単位とは独立に変化の大きさを表すことができる。 需要の価格弾力性あるいは需要の価格に対する弾力性は、このような価格の変化率と需要の変化率の比として定義される。すなわち、 需要の価格弾力性=−需要の変化率/価格の変化率 となり、数式で表すと 需要の価格弾力性=− となる。pは価格の水準、Δpは価格の変化量、Xは需要量、ΔXは需要の変化量を表している。 ・ rent・・・地代 **4.価格差別 [#me461c50] 価格支配能力を持った企業は同じ製品を顧客や地域や時間帯ごとに顧客の支払い意欲の高さに応じて、異なる価格で売ることによって利潤を高められる。これを価格差別という。 ***4.1 グループ別価格差別 [#ibdfa154] 価格支配能力を持つ企業は、価格に対して敏感な(例えば学生や子供など)には安く、それ以外の消費者には高い値段で売ることによって、すべての人に同じ価格で販売するよりも高利潤を得ることができる。 (例) ・映画館で学生や子供対象の割引制度 ・日本のLouis Vuitton商品の価格 価格差別を成功するためには二つの条件が成立する必要がある。第一に、需要の価格弾力性が異なる消費者グループがいくつかあり、企業はどのグループが価格に対して敏感かを知っておく必要があることである。第二に、消費者グループ同士が互いに取引できないよう市場が分断されていなければ、消費者は安いところから買って転売してしまう。 グループ価格差別には、時間別の差別の例も多い。たとえば映画DVDのレンタルはロードショウよりも安いし、同じ本でも文庫本はハードカバーよりも後に出版され、価格も安くなっている。これは、新しい本や映画をすぐ読んだり見たりしたい人は多少高い料金でも購入するからである。 ***4.2 顧客別価格差別 [#l819ce25] 独占企業は最も有利な完全価格差別を行うことが可能である。図3.3に示すように、もし企業が各消費者の財に対する留保価格(財のために支払ってもよいと考える最高額)を知ることができれば、最も高い価格を支払ってよいと考える客には 、次の消費者には というふうに顧客ごとに違った価格を設定する。そして留保価格がちょうど財の限界費用に等しい客にまで財を売り、それ以下の客には販売しない。 品薄の人気商品と売れ残りの不人気商品とをセットで販売することを抱き合わせ販売という。しかし、独占禁止法では「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない」(19条)と規定されており、抱き合わせ販売は、この「不公正な取引」に該当する。日本では1998年1月に、公正取引委員会がWindows 95とInternet Explorer 4.0のプリインストール販売、およびExcel 97とWord 97のプリインストール販売が抱き合わせ販売に当たる可能性があるとして、マイクロソフト日本法人を立ち入り検査した。 ***4.3 二部料金制 [#ac3e5b75] スポーツクラブや、ケーブルテレビ、電話など、入場料や加入料と、使用頻度に応じた使用料を払わなければならない二部料金制がある。使用料は、通常使用の限界費用を上回るので、たくさん利用する人ほどコストと比べて高い料金を総計で支払うことになる。この意味で、二部料金制も一種の価格差別といえる。 二部料金制の仕組みは、完全価格差別と同じである。独占企業が、利潤を最大にするために、財の消費による事後的な消費者余剰を大きくし、事前の入場料として、消費者からこれを吸い上げる必要がある。いったんメンバーに加入した客の使用料を企業の限界費用に抑えれば、客は頻繁にこのサービスを利用するため、消費者余剰は最高になる。 企業にとって、最適な方法は、メンバーになった顧客の使用料をできるだけ低くし、入場料を高く設定することである。しかし、消費者の間で、使用頻度の高い人と低い人がいる場合には、使用料を使用の限界費用より、高く設定し、使用頻度の高い人から多くの収益を得ることで、企業の利潤を高められる。 ***4.4 価格差別の厚生分析 [#f8890dfc] 価格差別を行う独占は、価格差別をしない独占と比べて経済厚生にどのような影響を及ぼしているか。顧客別価格差別では、企業は社会的に効率的な生産量を供給する。したがって、レント・ディシペーションの問題がなければ、価格差別によって経済厚生は高まる。 グループ別価格差別を実施する独占企業において、価格に敏感な消費者グループ(H)は価格差別をしない独占の場合より低い価格で多くの量を供給する。一方、価格弾力性の低いグループ(L)には、より高い値段で少量を供給する。 限界費用(MC)を一定として、図3,4をみると、Hグループの総余剰増加分は、 となり、 他方、Lグループは、 となる。 最初に価格差別によって生産総量への影響はないとすると、価格差別は製品の供給量の一部をグループLから、グループHに移す効果がある。グループHでは、均一価格 より、留保価格が低い消費者も製品を消費するようになり、グループLでは より留保価格が高いのに消費をあきらめる消費者が発生する。この結果、前者による経済損失 、後者による経済損失 が発生する。価格差別の結果、このように各消費者の財への限界評価額にばらつきが生ずるため、 だけの資源配分の非効率が生じる。 消費者全体への販売量をQであらわすと、均一価格の独占Mから価格差別Dへ移行することに伴う余剰変化は、 ] である。 したがって、価格差別の下で生産量が増えない限り、価格差別は経済厚生を悪化させるという結論が得られる。 **5、買い手独占 [#db63ae5a] 買い手側が独占である場合、雇用者と労働者を例にすると、主要な労働者が一社しかない場合、労働者は雇用主の提示する賃金Wを所与として、労働するかを決める。雇用されたいという意欲に差があるとすると、図3,5のように労働供給曲線 は右上がりとなる。次に、企業が労働者の雇用を一人増やすことによる収入の増加(限界収入生産物)がどうなるのか考える。企業がプライステイカーであるとすると、限界収入生産物は、雇用の限界生産物(MPL)と市場価格Pの積になる。限界生産物が、雇用の増大に伴って減少すると仮定すると、限界収入生産物曲線も図3,5のように右下がりとなる。 もし、労働市場で企業が価格支配力をもたないとすれば、企業は利潤最大化のため限界収入生産物(P×MPL)が賃金に等しくなるまで雇用する。図3,5の 点が市場均衡である。 しかし、買い手独占の雇用主は賃金のプライステイカーではないので、雇用人数を増やしたいと思ったら、賃金をアップさせなければならない。 この点を考慮して、雇用量を決定するため、企業利潤は、 と、雇用量に依存する。Q(L)は企業の生産量、Cは労働以外の費用である。 ここで、利潤を最大にするための条件は、 となる。 企業はもう一人雇用を増やした時の限界的な収入と支出が等しくなるよう、雇用を決定する。この結果、買い手独占の場合の雇用量は、図3.5の となる。 買い手独占の実証研究としては、アメリカの野球選手の労働市場の研究が有名であり、FA制度が導入される以前の時代は、選手自らの限界収入生産物よりとても低い賃金しか受け取っていなかったという研究がある。 **6、品質の選択 [#t4326258] ここでは、独占企業が売る製品の品質について品質が1種類しかない場合を分析する。 今、均一価格( )によって 人に製品を売っている企業のケースを考える(図3.6)。品質改善によって消費者がその製品に払ってもいいと考える価格は上昇するので、需要曲線は、上方にシフトする。この結果、独占企業は だけ値上げできるので、その利潤は だけ増加する(NM Tに相当)。 他方、品質改善による消費者余剰の増加は消費者全体の支払い意欲の増加を合計したNMSRである。NMSRとNM Tでは、限界的消費者が、そうでない消費者と比べて品質改善への評価が小さければ、NMSRのほうが大きい。 **7、反独占政策 [#n994711c] 市場の独占化を予防する政策(事前の政策)と、独占状態の市場の弊害を小さくするための政策(事後の政策)では、企業の合併・買収規制、独占企業の分割、新規参入の促進などが挙げられる。一般的に、市場シェアの高い企業は競争政策上、強い規制がかけられている。 公的産業では、独占企業が設定する価格自体に上限を設けるという規制も行われている(13章を参照)。価格規制によって、独占企業もプライステイカーとなり、生産量を増大させる事が期待されるので、公的産業では、参入規制と価格規制の両方が行われているのである。 **補論 独占企業による複数の品質の選択 [#sce1a59f] ここでは、所得が高く高品質な製品を好む消費者(グループH)に品質 の製品を売り、低所得で品質をそれほど評価しない消費者(グループL)に品質 の製品を売る企業の品質 の選択の問題を分析してみる。 企業の利潤は、 であり、 は の品質の製品を開発するコストとし、製品の生産コストはゼロであるとする。 グループHの人々も、 の製品価格Pが高いと の製品を買うので、企業が の製品を販売するには、その価格は、 の条件を満たすよう低くしなければならない。これを消費者の自己選択の条件という。 **質問その他 [#pa99d818] -う〜ん、普通に開けるが。やっぱ、反応悪いから別なサーバー借りたいな。どこが評判いいだろうか。(鈴木 6/5) -第2章もそうだったけどこのテキスト、補論の書き方がいまいちだな、とゼミで言ったことをメモ。最後の部分「低品質の過少供給」ってのは日本語になってない。ちゃんと言うなら「低品質な製品について社会的に最適な状態よりも品質向上は進まない」とでも言うべき。グループLの消費者が品質Z&subsc2{L};の製品を購入するための条件も見当たらないし。(鈴木 6/5) -4.2節の参考資料 公正取引委員会「マイクロソフトコーポレーションに対する勧告について(平成16年7月13日)」 http://www.jftc.go.jp/pressrelease/04.july/04071301.pdf (鈴木 6/6) -演習問題6(2)で価格が交渉力で決まるとかって、本文のどこでもやってないような。(鈴木 6/22)
タイムスタンプを変更しない
*第3章 独占企業の行動とその経済的帰結 [#q082b1fe] **1. [#n07708de] ***1. 独占の生じる環境 [#tf091bfa] ある企業が独占かどうか判断するには市場の画定が必要である。同じ市場に属する製品のグループの場合、製品Aの価格が上がったとき製品Bへの需要が大きく増えるならAとBは代替性(同一の目的に使用されることが多いため、ある財の価格が上がる(下がる)ことにより、他の財の需要が増える(減る)ような財のこと。例えば、紅茶とコーヒーは代替財の関係にある。両者は、お菓子や、あるいは一服するときに一緒に飲まれることが多いからである。)Aの価格がa%上昇したとき、Bの需要b%変化するならば、その比率(=b/a)を製品BのAに対する需要の交差価格弾力性という。 また、市場の画定においては地理的範囲も必要である。地域Aの製品の価格上昇によって消費者が用意に地域Bの同じ製品に代替できれば、二つの地域は同じ市場にあるということである。 独占が生じるのは市場への参入に対して、規模の経済やサンク・コストなどの供給面の要因、市場規模の大きさ、規制などの参入障壁がある。 規模の経済とは生産規模が大きいほど平均費用を逓減できる。だが、2社目が参入することで、生産規模は減少し、平均費用が増加してしまう。さらに、供給量が増加するため価格が低下する。規模の経済が強いほど、新規参入による平均費用は上昇し、需要規模が小さいほど、新規参入によって価格は低下する。 また、既存企業はサンク・コストとなる投資を高水準にしているため、他の企業が競争するには大きな投資コストが必要となるため、新規参入は困難になる。サンク・コストは第一章で述べたように参入、退出障壁となる。 産業の市場規模は製品輸送コストや製品退出に対する貿易障壁に依存する。輸送コストや貿易障壁が高い産業ではその市場は一国や特定の地域に限定されてしまう。低所得の途上国では多くの産業で市場集中度が高く、経済成長につれてこれはは低下している。図3.1は各国の石油精製業の市場集中度と一人当たりの所得との相関図をあらわしている。最大の企業の市場シェアが低くなるにつれて一人あたりの所得が低下しているのがわかる。 第3の要因として法律の規制がある。まず自然独占(通信、電気、ガス、水道などの公共事業)がある。自然独占とは制度などの人為的な要因ではなく経済的な要因によって自然に発生する独占を指す。生産が規模の経済を持つとき、長期平均費用曲線が右下がりになる。この時、1つの企業が需要を独占した場合と、参入を認めて複数の企業で需要を共有した場合では、前者の方が、総費用が小さく効率的な生産となる。後者の場合、需要の分割によって参入企業すべてが赤字になることも考えられる。この場合には新規参入は発生せず、結果として自然に独占が発生してしまう。 また、特許が新規参入として機能する場合もある。特許(とっきょ)とは、新規で有用な技術を公開した発明者または特許出願人に対し、その公開の代償として、一定期間その発明を独占的に使用できる権利を付与する制度のこと。その権利を特許権という。たとえばゼロックス社のコピー機やポラロイド社のインスタント・カメラなどは特許が参入障壁であった。 **2. 独占企業の行動 [#s9e02fd9] ***2.1過小生産 [#g7b53ad4] 独占企業にとっての需要曲線は市場全体の需要曲線(P(Q))に等しい。需要曲線は通常右下がりと仮定すると、独占企業が供給を増やすと価格は低下する。独占企業の総費用曲線をC(Q)とすると、独占企業の利潤Π(Q)は以下の式であらわされる。 ここでP(Q)Qは総収入である。利潤を最大にするQha次の条件を満たす。 (1) 上の式の左辺は独占企業が1単位生産を増やすことによって得られる追加的な収入、すなわち限界収入MR(Q)であり、右辺はこれに伴う限界費用MC(Q)である。(1)の左辺が限界収入であることは図3.2が説明している。限界収入は1単位生産を増やすと販売数量が増えて価格が増えるが、他方で価格が低下し、販売による収入が低下することの両者の合計である。すなわち利潤最大化のためにはMR=MCとなるように生産量を選ぶが、独占企業の場合P'(Q)<0のため、限界収入は価格より小さくなる。また、独占利潤は限界費用が一定なら、(独占価格―限界費用)×独占数量―固定費用となるので、図3.2の からFを差し引いたものに等しい。 ***2.2マークアップ価格 [#n83987d5] 独占企業が生産コストと比べてどれだけ高い価格を設定するかは、需要関数の価格弾力性と反比例する。(1)式より、 (2) зは財の需要の価格弾力性である。(2)式から (3) となる。(3)式の左辺をラーナー指数といい、価格と限界費用の 離率を表す。(3)式からラーナー指数は財の需要の価格弾力性に反比例する。зの値が無限大に向かって増えるに伴い、ラーナー指数は1から0に向かって低下していく。 **3. 独占の非効率性 [#bd764721] 完全競争の場合と比べて、独占市場では以下の経済厚生(人々の受け取る経済的な満足・福利)が生じる。 ***3.1過小生産による資源配分上の損失 [#j6af2ef1] 完全市場と比較して、独占市場では生産者が独占利潤を得る反面、消費者は高い価格を払うこのになり、焼死者余剰が減少する。図3.2において消費者が失った余剰(台形 )のうち、独占の超過利潤 は消費者から企業への所得移転である。この移転は経済全体としては相殺される。残りの三角形AMEは消費者が失った分で企業の手に渡らなかったけ厚生損失である。完全競争市場に比べて独占市場では厚生損失が生じる理由は、独占が価格を高く維持するためである。 ***3.2 X非効率性 [#d5574950] 利潤を最大化するためには、完全競争市場化にある企業も独占企業であっても最小の費用で生産すべきだが、独占企業のほうが費用を最小化するのは難しい。この減少をライベンシュタイン(Leibensteiu)はX非効率性とよんだ。X非効率とは所与の資源を効率的に利用していない状況を資源配分の効率性問題と区別するための枠組みである。これを深刻化させる原因として第一に、組織あるいは構成員の地位が独占的であること、第2に、組織あるいは行動の権限階数が多いこと、第3に、組織構成員の作業成果に対する数量的把握が困難であることがあげられる。 4. 3 レント・シーキングとレント・ディシペーション レント・シーキングとは、1.企業による(独占)レント獲得・維持のための活動をいう。2.他企業の参入を阻止する行動や,政府による参入規制または輸入制限政策を実施・温存させるための政治的活動等が典型的。 またこれらの多くは社会的な資源の浪費となる。そのために資源を使うことをレント・ディシペーションという。 前回の補足説明 ・ 価格弾力性 価格の変化率=価格の変化量/元の価格の水準 (例) 価格が100円から110円に上がれば、価格の変化量は110円から100円をひいた10円になるが、価格の変化率はその10円を元の価格の水準である100円で割った0.1となる。変化率の場合には、通常これに100をかけてパーセントで表示するため、10%の価格上昇ということになる。つまり、 価格の変化率=価格の変化量/元の価格 =新しい価格―元の価格/元の価格 =110−100/100=0.1=10% となる。同様に 需要の変化率=需要の変化量/元の需要量 となる。 このように変化の大きさを変化率で表せば、どのような単位で価格や需要量が表示されていても、単位とは独立に変化の大きさを表すことができる。 需要の価格弾力性あるいは需要の価格に対する弾力性は、このような価格の変化率と需要の変化率の比として定義される。すなわち、 需要の価格弾力性=−需要の変化率/価格の変化率 となり、数式で表すと 需要の価格弾力性=− となる。pは価格の水準、Δpは価格の変化量、Xは需要量、ΔXは需要の変化量を表している。 ・ rent・・・地代 **4.価格差別 [#me461c50] 価格支配能力を持った企業は同じ製品を顧客や地域や時間帯ごとに顧客の支払い意欲の高さに応じて、異なる価格で売ることによって利潤を高められる。これを価格差別という。 ***4.1 グループ別価格差別 [#ibdfa154] 価格支配能力を持つ企業は、価格に対して敏感な(例えば学生や子供など)には安く、それ以外の消費者には高い値段で売ることによって、すべての人に同じ価格で販売するよりも高利潤を得ることができる。 (例) ・映画館で学生や子供対象の割引制度 ・日本のLouis Vuitton商品の価格 価格差別を成功するためには二つの条件が成立する必要がある。第一に、需要の価格弾力性が異なる消費者グループがいくつかあり、企業はどのグループが価格に対して敏感かを知っておく必要があることである。第二に、消費者グループ同士が互いに取引できないよう市場が分断されていなければ、消費者は安いところから買って転売してしまう。 グループ価格差別には、時間別の差別の例も多い。たとえば映画DVDのレンタルはロードショウよりも安いし、同じ本でも文庫本はハードカバーよりも後に出版され、価格も安くなっている。これは、新しい本や映画をすぐ読んだり見たりしたい人は多少高い料金でも購入するからである。 ***4.2 顧客別価格差別 [#l819ce25] 独占企業は最も有利な完全価格差別を行うことが可能である。図3.3に示すように、もし企業が各消費者の財に対する留保価格(財のために支払ってもよいと考える最高額)を知ることができれば、最も高い価格を支払ってよいと考える客には 、次の消費者には というふうに顧客ごとに違った価格を設定する。そして留保価格がちょうど財の限界費用に等しい客にまで財を売り、それ以下の客には販売しない。 品薄の人気商品と売れ残りの不人気商品とをセットで販売することを抱き合わせ販売という。しかし、独占禁止法では「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない」(19条)と規定されており、抱き合わせ販売は、この「不公正な取引」に該当する。日本では1998年1月に、公正取引委員会がWindows 95とInternet Explorer 4.0のプリインストール販売、およびExcel 97とWord 97のプリインストール販売が抱き合わせ販売に当たる可能性があるとして、マイクロソフト日本法人を立ち入り検査した。 ***4.3 二部料金制 [#ac3e5b75] スポーツクラブや、ケーブルテレビ、電話など、入場料や加入料と、使用頻度に応じた使用料を払わなければならない二部料金制がある。使用料は、通常使用の限界費用を上回るので、たくさん利用する人ほどコストと比べて高い料金を総計で支払うことになる。この意味で、二部料金制も一種の価格差別といえる。 二部料金制の仕組みは、完全価格差別と同じである。独占企業が、利潤を最大にするために、財の消費による事後的な消費者余剰を大きくし、事前の入場料として、消費者からこれを吸い上げる必要がある。いったんメンバーに加入した客の使用料を企業の限界費用に抑えれば、客は頻繁にこのサービスを利用するため、消費者余剰は最高になる。 企業にとって、最適な方法は、メンバーになった顧客の使用料をできるだけ低くし、入場料を高く設定することである。しかし、消費者の間で、使用頻度の高い人と低い人がいる場合には、使用料を使用の限界費用より、高く設定し、使用頻度の高い人から多くの収益を得ることで、企業の利潤を高められる。 ***4.4 価格差別の厚生分析 [#f8890dfc] 価格差別を行う独占は、価格差別をしない独占と比べて経済厚生にどのような影響を及ぼしているか。顧客別価格差別では、企業は社会的に効率的な生産量を供給する。したがって、レント・ディシペーションの問題がなければ、価格差別によって経済厚生は高まる。 グループ別価格差別を実施する独占企業において、価格に敏感な消費者グループ(H)は価格差別をしない独占の場合より低い価格で多くの量を供給する。一方、価格弾力性の低いグループ(L)には、より高い値段で少量を供給する。 限界費用(MC)を一定として、図3,4をみると、Hグループの総余剰増加分は、 となり、 他方、Lグループは、 となる。 最初に価格差別によって生産総量への影響はないとすると、価格差別は製品の供給量の一部をグループLから、グループHに移す効果がある。グループHでは、均一価格 より、留保価格が低い消費者も製品を消費するようになり、グループLでは より留保価格が高いのに消費をあきらめる消費者が発生する。この結果、前者による経済損失 、後者による経済損失 が発生する。価格差別の結果、このように各消費者の財への限界評価額にばらつきが生ずるため、 だけの資源配分の非効率が生じる。 消費者全体への販売量をQであらわすと、均一価格の独占Mから価格差別Dへ移行することに伴う余剰変化は、 ] である。 したがって、価格差別の下で生産量が増えない限り、価格差別は経済厚生を悪化させるという結論が得られる。 **5、買い手独占 [#db63ae5a] 買い手側が独占である場合、雇用者と労働者を例にすると、主要な労働者が一社しかない場合、労働者は雇用主の提示する賃金Wを所与として、労働するかを決める。雇用されたいという意欲に差があるとすると、図3,5のように労働供給曲線 は右上がりとなる。次に、企業が労働者の雇用を一人増やすことによる収入の増加(限界収入生産物)がどうなるのか考える。企業がプライステイカーであるとすると、限界収入生産物は、雇用の限界生産物(MPL)と市場価格Pの積になる。限界生産物が、雇用の増大に伴って減少すると仮定すると、限界収入生産物曲線も図3,5のように右下がりとなる。 もし、労働市場で企業が価格支配力をもたないとすれば、企業は利潤最大化のため限界収入生産物(P×MPL)が賃金に等しくなるまで雇用する。図3,5の 点が市場均衡である。 しかし、買い手独占の雇用主は賃金のプライステイカーではないので、雇用人数を増やしたいと思ったら、賃金をアップさせなければならない。 この点を考慮して、雇用量を決定するため、企業利潤は、 と、雇用量に依存する。Q(L)は企業の生産量、Cは労働以外の費用である。 ここで、利潤を最大にするための条件は、 となる。 企業はもう一人雇用を増やした時の限界的な収入と支出が等しくなるよう、雇用を決定する。この結果、買い手独占の場合の雇用量は、図3.5の となる。 買い手独占の実証研究としては、アメリカの野球選手の労働市場の研究が有名であり、FA制度が導入される以前の時代は、選手自らの限界収入生産物よりとても低い賃金しか受け取っていなかったという研究がある。 **6、品質の選択 [#t4326258] ここでは、独占企業が売る製品の品質について品質が1種類しかない場合を分析する。 今、均一価格( )によって 人に製品を売っている企業のケースを考える(図3.6)。品質改善によって消費者がその製品に払ってもいいと考える価格は上昇するので、需要曲線は、上方にシフトする。この結果、独占企業は だけ値上げできるので、その利潤は だけ増加する(NM Tに相当)。 他方、品質改善による消費者余剰の増加は消費者全体の支払い意欲の増加を合計したNMSRである。NMSRとNM Tでは、限界的消費者が、そうでない消費者と比べて品質改善への評価が小さければ、NMSRのほうが大きい。 **7、反独占政策 [#n994711c] 市場の独占化を予防する政策(事前の政策)と、独占状態の市場の弊害を小さくするための政策(事後の政策)では、企業の合併・買収規制、独占企業の分割、新規参入の促進などが挙げられる。一般的に、市場シェアの高い企業は競争政策上、強い規制がかけられている。 公的産業では、独占企業が設定する価格自体に上限を設けるという規制も行われている(13章を参照)。価格規制によって、独占企業もプライステイカーとなり、生産量を増大させる事が期待されるので、公的産業では、参入規制と価格規制の両方が行われているのである。 **補論 独占企業による複数の品質の選択 [#sce1a59f] ここでは、所得が高く高品質な製品を好む消費者(グループH)に品質 の製品を売り、低所得で品質をそれほど評価しない消費者(グループL)に品質 の製品を売る企業の品質 の選択の問題を分析してみる。 企業の利潤は、 であり、 は の品質の製品を開発するコストとし、製品の生産コストはゼロであるとする。 グループHの人々も、 の製品価格Pが高いと の製品を買うので、企業が の製品を販売するには、その価格は、 の条件を満たすよう低くしなければならない。これを消費者の自己選択の条件という。 **質問その他 [#pa99d818] -う〜ん、普通に開けるが。やっぱ、反応悪いから別なサーバー借りたいな。どこが評判いいだろうか。(鈴木 6/5) -第2章もそうだったけどこのテキスト、補論の書き方がいまいちだな、とゼミで言ったことをメモ。最後の部分「低品質の過少供給」ってのは日本語になってない。ちゃんと言うなら「低品質な製品について社会的に最適な状態よりも品質向上は進まない」とでも言うべき。グループLの消費者が品質Z&subsc2{L};の製品を購入するための条件も見当たらないし。(鈴木 6/5) -4.2節の参考資料 公正取引委員会「マイクロソフトコーポレーションに対する勧告について(平成16年7月13日)」 http://www.jftc.go.jp/pressrelease/04.july/04071301.pdf (鈴木 6/6) -演習問題6(2)で価格が交渉力で決まるとかって、本文のどこでもやってないような。(鈴木 6/22)
テキスト整形のルールを表示する