第5章 公益企業理論

第5章 公益企業理論

日常生活を営む上で不可欠な財・サービスを安定的に供給するのが公共事業の役割である。公共事業には市場独占が認められるか、または参入規制などによってそれは保護される。

限界費用価格形成 公共事業の目的は公共の便益(厚生)の最大化であると行政によって定められている。具体的には、厚生を最大にする水準まで財・サービスを供給するように規制が企業活動に加えられている。公益事業を含む企業が私企業であるならば、その選択・決定に政府が間接的に介入して供給量の確保と死荷重の減少による資源配分の改善を目指す。 ・ 平均費用が逓減しないケース 対象となる私企業は独占であるが、公共の便益を最大にするよう政府によって規制されている。その最大化問題は max WE= で表わされる。 公益企業は厚生を最大にするよう供給量を決定する。WEは厚生、p(q)は市場の逆需要関数を示し、産出量の減少関数である。 どのような産出量(料金)の下で厚生が最も大きくなるのか。厚生最大化のための1段条件はWEを産出量で微分することによって

=p(q)−c´(q)=0で与えられる。(5 .1)

その最大化条件は価格=限界費用である。両者が一致するところで産出(供給)量が決められるときに、厚生が最大となる。 (5.1)式のような価格決定方法は限界費用価格形成(原理)または限界費用価格決定方式と名付けられる。限界費用曲線と需要曲線が交差するところで産出量が決められるならば、これによって規制を受けない独占企業の産出量よりも多くの財が供給される。限界費用価格形成による産出量は市場支配力を企業が持たないときの産出量に等しく、消費者余剰と厚生は最大効率(パレート効率的配分)の水準まで拡大され、独占による死荷重は生まれない。このためこの価格形成方式は最善の方法となる。しかし、平均費用逓減産業(自然独占産業)に限界費用価格形成が適用されると、平均費用(同時に限界費用)が逓減する場合、もし限界費用価格形成によって供給量が決定されるならば、確かに厚生は最大となるが、利潤は負となるといった問題が起こる。なぜなら、図の5-3で産出量q*のところでは価格が平均費用(AC)を下回りCFEp*だけの赤字が発生するため。 そこで、この赤字を誰がどう補填するかという深刻な問題が起こる。 短期はともかく長期的には赤字の発生は企業の存続を危うくする。赤字問題の1つの解決方法は政府がその赤字額に等しい補助金を企業に与えることである。赤字を税金で穴埋めする方法として、財の価格に一定税率を課税する方法である従価税(従量税)のような財への課税方式と、個人の所得から税金を一括して徴収する一括税のような所得税方式の二つが考えられる。 企業の赤字を税金で補填する際には、いくつかの問題が浮上する。第一は国民全員から平等に一括税を徴収するときは受益者負担原則が働かず税負担の不公平が発生する。さらに一括税では所得の不平等化が促進されることがある。第二に、自然独占産業は一般に多額の設備投資を必要とするので、税金の負担額自体が大きくなり、税収確保のための深刻な問題が起こる。


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Last-modified: 2011-11-11 (金) 16:23:45 (4550d)

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